医療機器は購入かリースか|院長が本当に比べるべき4つの判断軸

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新しい医療機器の導入を前に、「購入とリース、結局どちらが得なのか」と迷っていませんか。多くの比較記事は「総支払額で見れば購入が安い」と結論づけます。それは事実です。けれど、院長が本当に比べるべきなのは、総額の数十万円差ではなく「自院のキャッシュと、その機器の寿命に合っているか」という別の軸です。本記事では、単純な二択ではなく、機器の寿命・キャッシュ・総支払額・節税という4つの判断軸で使い分ける考え方を、社外CFOの目線で整理します。

この記事でわかること

  • 購入・リース・割賦の総支払額はどう違うのか(数字の目安)
  • 「リースは割高」の一言で切り捨ててよいのか
  • 自院の機器は購入とリース、どちらに寄せるべきか(機器タイプ別)
  • 医療機器に使える節税制度の意外な落とし穴と、2027年の会計ルール変更

結局、購入とリースはどちらが安いのか?

まず総額の話から片づけましょう。長く使い続ける前提なら、総支払額は購入(自己資金または融資)が最も安く、リースが最も高くなります。 これは調達方法の構造から来る、ほぼ動かない順序です。

医療機器の調達方法は、大きく「購入(自己資金一括・銀行融資)」「リース」「割賦(分割払い)」の3つに分かれます。長期保有を前提にした実質コストは、一般に (1) 自己資金購入、(2) 銀行融資+購入、(3) 割賦、(4) リース、の順で高くなっていきます。リースには機器代金に加えてリース会社の手数料が乗るため、料率を実質年利に換算すると3〜5%程度になることが多いからです。

5年リースの料率は月1.80%前後が目安です。取得価額3,000万円の機器を5年リースにすると、月額は3,000万円 × 1.80% = 約54万円、5年間(60か月)の総支払額は約3,240万円。購入価格と比べると約240万円の上乗せです(富士フイルム, 2025)。

ここまでなら「やはり購入が正解」に見えます。けれど、この240万円が何の対価かを理解すると、話は単純ではなくなります。

リースは本当に「割高なだけ」なのか?

いいえ。上乗せ分は、初期キャッシュの温存・陳腐化リスクの肩代わり・資金繰りの平準化という3つの価値の対価です。 総額が高いことと、自院にとって不利であることは同じではありません。

リースの最大の利点は、まとまった初期支出が要らないことです。3,000万円を一括で払えば手元現金はその分だけ薄くなりますが、リースなら月54万円の負担に平準化できます。開業直後や運転資金に不安がある時期は、この平準化が手元資金の余力を守ります。

もう一つ見落とされがちなのが、融資枠(与信枠)への影響です。与信枠とは、銀行が「この先までなら貸せる」と見ている上限のことです。設備資金を銀行融資でまかなうと、その分の枠を使ってしまい、後から運転資金を借りたいときの余地が狭まります。リースはリース会社の審査で、銀行の与信枠とは別枠で動くことが多いため、開業初期にあえて設備をリースへ寄せ、銀行の枠を運転資金用に残しておくという戦略も成り立ちます(交渉の準備は銀行交渉を変える5つの準備を参照)。

加えて、技術が速く進む機器では「古くなった機器を抱え込むリスク」をリース会社に肩代わりしてもらえる面もあります。つまりリースの240万円は、ムダな割高ではなく「現金を手元に残しつつ、買い替えやすさを買う」費用と捉えるのが適切です。融資の組み方やキャッシュフローの考え方は、クリニック事務長の決算書活用ガイドでも触れています。

なお、購入とリースの中間にあたる「割賦(分割払い)」もあります。頭金(購入価格の10〜30%程度)を入れて、残りを7年程度の分割で支払う方式です。リースと違って完済後に所有権が自院へ移り、総支払額は銀行融資より少し高い程度に収まりやすいのが特徴です。「所有権は残したいが、一括は資金繰り的に厳しい」というMRI・CTのような高額機器で、現実的な落としどころになります。

うちの機器は購入とリース、どっちが正解?

ここからは機器タイプ別の使い分けです。判断の起点は「その機器が技術的に古くなるのが速いか、長く使えるか」。 古くなるのが速い機器はリース、長く使える機器は購入、が大きな方向性になります。

機器タイプ別の一般的な使い分けは次のとおりです。

機器向く調達方法理由
電子カルテ・レセコンリース(5〜7年)技術進歩が速く、更新サイクルが短い
X線装置(CR/DR)購入(融資)法定耐用年数6年。長期使用に向く
歯科ユニット購入法定耐用年数7年。長く使うのが一般的
リハビリ機器購入技術変化が小さい
超音波診断装置(エコー)どちらも可診療量と更新方針による
MRI・CTリースまたは割賦高額・技術進歩が速く、長期保有のリスクが大きい
内視鏡購入または割賦法定耐用年数6年。買取後の転用余地もある

(法定耐用年数は国税庁「器具及び備品」別表より。X線・MRI据置型6年、手術機器5年、歯科ユニット7年、消毒殺菌用機器4年など)

法定耐用年数とは、税務上その機器を何年かけて費用化するかの基準年数です。この年数を大きく超えて使い続ける見込みの機器(X線・歯科ユニットなど)は、所有権が手に入る購入のほうが合理的です。逆に、耐用年数あたりで買い替えたい機器(電子カルテなど)は、返却して新しいものに乗り換えやすいリースが向きます。

ここで一点、見落としやすいのが保守費用です。MRI・CTのような高額機器は、調達方法にかかわらず保守契約がほぼ不可欠で、年間の保守費が取得価額の5〜10%程度かかるケースもあります。購入や割賦ではこの保守費を自院で別途負担するのが原則です。一方、保守を月額に含めた「フルサービスリース」もあります。総額を比べるときは、本体価格やリース料だけでなく保守費まで含めた「使い切るまでの総コスト」で並べることが大切です。

設備投資で使える節税制度は何がある?

ここが院長の誤解が最も多いところです。中小企業向けの代表的な投資減税は、医療機器の本体にはほぼ使えません。 「設備投資すれば即時償却で節税できる」と聞いて期待すると、肩透かしを食らいます。

代表格の中小企業経営強化税制は、即時償却または取得価額の一定割合を税額から差し引ける有力な制度ですが、医療保険業を行う事業者が取得する医療機器は対象外とされています。クリニックで対象になるのは電子カルテ(ソフトウェア)に限られるのが実情です(国税庁)。中小企業投資促進税制も、器具備品が対象設備に含まれないため、医療機器への適用は限定的です。

では医療機器に使える制度がないかというと、一つあります。「医師勤務時間短縮計画に基づく特別償却(取得価額の15%)」です(日本医師会, 厚労省)。特別償却とは、通常の減価償却に上乗せして、初年度に多めに費用計上できる仕組みのことです。これは2027年3月31日までに取得した機器が対象で、個人診療所でも適用できます。ただし、都道府県の医療勤務環境改善支援センターに「医師勤務時間短縮計画」を提出して確認を受ける、という事前手続きが必要です。節税額そのものは大きくありませんが、手順を踏めば確実に使える制度です。

もう一つ実務的なのが、少額減価償却資産の特例です。取得価額40万円未満の機器は、取得した年度に全額を費用にできます(年間上限300万円)。この基準はもともと30万円未満でしたが、令和8年度の税制改正で40万円未満へ引き上げられ、2026年4月1日以後に取得した機器から適用されています(年間上限300万円は据え置き)(財務省, 2026)。心電計や小型機器の更新では、この特例が効くことが少なくありません。

これらの適用可否は個別判断が必要で、事前手続きを忘れると後から使えないものもあります。導入を決める前に、必ず顧問税理士に確認してください。

2027年のリース会計基準で、何が変わる?

医療法人(法人格のクリニック)が特に押さえておきたい変化です。2027年4月以後に始まる事業年度から、新しいリース会計基準が強制適用され、これまでリースで得られた「簿外」のメリットが消えます。

これまでオペレーティングリースと呼ばれる契約は、借りている機器を資産として帳簿に載せず、毎月のリース料を費用として処理する「オフバランス(簿外)」が認められていました。オフバランスとは、その負債が貸借対照表(BS)の表面に出てこない状態を指します。これにより、借入と同じ実態でも財務指標が良く見える効果がありました。

新基準では、原則としてすべてのリースについて、借りている権利(使用権資産)と将来の支払い義務(リース負債)をBSに載せる「オンバランス化」が求められます(OBC, 2025)。早期適用は2025年4月以後開始事業年度から可能です。つまり「リースなら負債が表に出ず財務がきれいに見える」という理由での選択は、その利点を失います。法人のクリニックは、契約前にBSへの影響を試算しておくと安全です。決算書の読み方はクリニック事務長の決算書活用ガイドも参考にしてください。

4つの判断軸で決める——迷ったときのチェック手順

迷ったら、次の4つの判断軸を順に自問してください。

  1. 判断軸①|機器の寿命:その機器は技術的に古くなるのが速いか? 速い(電子カルテ・MRI・CTなど)ならリース方向、遅い(X線・歯科ユニットなど)なら購入方向。
  2. 判断軸②|キャッシュと与信枠:初期キャッシュに余力が乏しい、または運転資金の借入余地を残したいなら、リースや割賦で平準化し、銀行の与信枠を温存する。
  3. 判断軸③|総支払額:長期使用(耐用年数+5〜10年)を前提にするか? するなら総支払額で購入が安くなるため、融資+購入が合理的。
  4. 判断軸④|節税・会計ルール:取得前の節税手続きと2027年会計基準の影響を確認したか? 15%特別償却や少額特例の適用可否、医療法人ならBSへの影響を、購入前に税理士へ確認。

大切なのは「どちらが得か」を一律に決めないこと。この4軸を機器ごとに並べれば、設備投資は感覚ではなく数字で決められます。

よくある質問

Q. 医療機器のリースは途中で解約できますか?

ファイナンスリースは原則として中途解約できず、解約するなら残リース料相当の「規定損害金」を一括で求められるのが一般的です。短期で入れ替える可能性がある機器は契約年数を欲張らないこと。所有権が将来移る割賦や購入なら、不要になった際に売却・下取りで一部を回収できる余地が残ります。

Q. リース料は経費として全額落とせますか?

オペレーティングリースのリース料は、原則として支払時に費用処理できます。ただし2027年4月以後に始まる事業年度からは、会計基準の適用対象(医療法人など)では使用権資産として資産計上し、減価償却と利息相当に分けて費用化する形に変わります。個人診療所の税務処理は顧問税理士に確認してください。

Q. 中古の医療機器でも同じ判断軸でよいですか?

基本の4軸は同じです。中古は法定耐用年数を簡便法で短く見積もれるため減価償却を早く進めやすい一方、保守部品の供給期間が新品より短いことがあります。中古を選ぶ際は「いつまで保守契約を結べるか」を本体価格より先に確認してください。

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