採用面接は「会社の営業活動」— 売り手市場で求職者に選ばれるための視点転換

three men using MacBooks
⏱ この記事は約8分で読めます

「いい人が来ない」「面接まで進んでも辞退される」——採用面接の席にご自身で座られている中小企業経営者の方から、最近とくに多くいただくお声です。求人広告に予算を投じ、エージェントにも依頼している。それでも採れない。書類選考は通るのに、最後の面接で逃げられてしまう。

原因は「面接そのもの」にあるかもしれません。新卒求人倍率8.98倍、正社員不足53.4%という売り手市場の今、面接を「会社の営業活動」と捉え直すための視点転換をお伝えします。具体的な質問設計や評価シートの作り方(STARメソッドと構造化面接の実践)は別記事で改めて扱う予定です。まずは、面接という場の意味づけを整理させてください。

なぜ今、採用面接のやり方を見直す必要があるのか?

面接は今、明確に「採る場」から「採られる場」へ変わっています。理由は、求職者側に圧倒的な選択肢があるからです。

リクルートワークス研究所の調査によると、従業員300人未満の中小企業における2026年3月卒の新卒求人倍率は8.98倍。コロナ前のピーク(9.91倍)に迫る、極端な売り手市場です(出典:リクルートワークス研究所 第42回ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒))。一方で、5,000人以上の大企業の倍率は0.34倍。同じ年に同じ学生が動いていながら、これだけの差がついています。

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」でも、正社員が「不足している」と回答した企業は53.4%(出典:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月))。中途採用市場でも、応募者一人ひとりが複数社を比較しながら動いているのが標準です。

「10人採りたいけれど、1人しか来ない」。これが中小企業の偽らざる現実です。応募してくれた1人を選別する余裕はありません。その1人に「ここに決めたい」と思ってもらう活動こそが、今の面接の役割だと考えてみてください。

求職者は本当に「会社を選んでいる」のか?

選んでいます。しかも、面接が終わった瞬間に判断しているケースが実際の調査でも確認されています。

エン・ジャパンが約8,000人を対象に行った調査では、転職活動中に選考辞退を経験した人は61%。さらに、辞退したタイミングの内訳を見ると次のようになります(出典:エン・ジャパン「8000人に聞いた『選考辞退』の実態調査」2023年)。

  • 面接前の辞退:46%
  • 面接後の辞退:45%
  • 内定取得後の辞退:37%

注目したいのは、辞退の半数近くが「面接後」に発生しているという事実です。書類選考を通り、わざわざ時間を取って面接に来てくれた候補者の約半数が、その後の辞退者に変わっている。面接の席は、入社の決断が最終確認される場でもあるのです。

なお、面接後の辞退理由として最も多いのは「求人情報と話が違った」(49%)。スペック以前に、会社と候補者の認識のズレが見抜かれた瞬間に縁が切れているわけです。

面接で求職者は会社の何を見ているのか?

給与や仕事内容と同じくらい、「この会社の人と一緒に働けるか」を見ています。つまり面接官の振る舞いを通して、組織のカルチャーそのものを評価しています。

新卒採用領域の調査でも、内定辞退の決定的要因の1位は「面接官の印象が悪い」(55.8%)でした(出典:株式会社インタツアー「23~24卒 内定承諾・辞退の決定要因調査」2023年、23卒・24卒大学生676名対象)。スキルや待遇ではなく、面接の場で受けた人としての印象が、最終判断を左右していたということです。

求職者が見ているのは、たとえばこんな点です。

  • 質問の内容が事前に整理されているか(行き当たりばったりではないか)
  • 自分の話を最後まで聴いてもらえるか
  • 会社側が、自分にどんな未来を提供してくれるかを言葉にしてくれるか
  • 不合格になった場合に、誠実に対応してもらえるか

どれも「審査する側」の発想からは生まれません。お客様商談と同じ温度で臨んでいるか——求職者はそこを見ています。

「審査するだけの面接」は何を失っているのか?

採用面接の場でいちばんもったいないのは、質問だけして相づちを打ち、最後に「結果は追ってご連絡します」で終わってしまうパターンです。これでは、会社の魅力が候補者に何ひとつ届きません。

よく見かける、もったいない進め方を並べてみます。

  • 履歴書を見ながら「弊社を選んだ理由は?」と尋ねるが、自社の魅力を語る時間は取らない
  • 候補者の話に対して「なるほど」「わかりました」だけで終わり、自社のエピソードと重ねない
  • 待遇や条件の説明はするが、「あなたが入社したらこんな景色が見える」というストーリーは話さない
  • 合否連絡が事務的、または音沙汰なし

これらは面接官の悪意ではありません。むしろ「公平に審査しなければ」と真面目に思っているからこそ起きる現象です。ただ、求職者から見れば、「この会社は自分に興味がないのだな」というメッセージとして届いてしまいます。

先ほど触れたとおり、内定辞退の決定的要因の1位は面接官の印象です。これでは決まるものも決まりません。

経営者が今日からできる視点転換とは?

難しい仕組みづくりの前に、面接の意味づけを変えるだけで動き出せる部分があります。次の5つは、ノウハウというより「姿勢」の話です。

まず最初に、面接室に入ってきた候補者へ「お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます」と、目を見て伝えてみてください。当たり前に聞こえますが、意外と抜けている面接が多いものです。最初の30秒の温度が、その後の対話の流れを決めます。「審査の場」ではなく「お互いの時間を持ち寄った場」だと、会社の側から態度で示す——ここが起点です。

次に、候補者の話をひととおり聴き終えたら、すぐ次の質問に行かず、「実はうちでも似た場面があったんですよ」と、自社の現場エピソードを返してあげてください。一問一答ではなく対話のラリーに変わります。候補者からすると、自分の話がちゃんと届いたという手応えと、会社の輪郭の両方を、一度に受け取れる瞬間です。

三つ目に、面接時間の2〜3割は思い切って会社を語る時間にあててみてください。入社後のキャリアパス、現場で活躍している社員の顔ぶれ、いま組織が抱える課題やネガティブな側面まで含めて、正直に伝える時間です。「入社半年でこの案件を任せたい」と入社後の景色を一枚絵で渡してあげると、候補者の中で会社像の解像度が一気に上がります。良い話だけを並べると、かえって信頼されません。課題を率直に共有することが、結果として誠実さの証明になります。

四つ目に、候補者の「聞きたいこと」に十分な時間を取ってください。「他にご質問は?」を5分で切り上げない、というだけのことです。なぜならここで出る質問こそ、候補者が本当に気にしている論点だからです。給与のこと、配属先のこと、家庭との両立のこと——遠慮しながら最後の最後に持ち出される問いに、丁寧に答え切れるかどうか。ここで会社の誠意がはっきり見えてしまいます。

そして最後に、面接後の連絡を、誠実に・早く返してください。「結果は◯日以内にご連絡します」と明示し、その期日を守る。合否どちらの場合でも、候補者を宙ぶらりんで放置する時間を作らない。これだけで、印象は本当に大きく変わります。商談で見積もりを出すと約束した期日を守るのと、まったく同じ作法です。

まとめ:面接は、最高の営業機会である

採用面接は、見極める場ではなく、お互いを選び合う場です。求人倍率8.98倍、正社員不足を実感する企業が53.4%という今、待っているだけでは会社は選ばれません。面接の席に座った瞬間から、会社の側もまた「評価される側」である——この視点を、まず経営者ご自身が持っていただきたいのです。

質問のテクニックや評価シート設計、面接官トレーニング——個別の手法も大切ですが、その前に「面接は会社の営業活動である」という前提が共有されていなければ、どんなノウハウも空回りします。今日の面接から、ぜひこの視点を試してみてください。

とはいえ、「明日の面接、自分1人でやり切れるか」「気づけば質問するだけの面接に逆戻りしそうだ」と引っかかった方も多いはずです。採用は経営者が孤独になりがちな領域で、エージェントは送客が仕事、社労士は法務が領域。「面接の組み立て方を、自社の経営の文脈で一緒に考えてくれる人」が社内外どちらにも見当たりません。

番頭代行は、まさにこの位置で、経営者の隣に座って採用設計と面接プロセスを一緒に組み立てます。「うちの面接、客観的に見てどうだろうか」「面接官によって評価がばらつくのを直したい」——そんなお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。初回相談は無料、オンラインで30分から対応します。

番頭代行への無料相談はこちら

参考資料