2026年改定の算定漏れ・届出、今からでも取り戻せる|事務長の点検・再届出チェック実務

Three professionals discussing charts in a meeting.
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この記事でわかること

2026年(令和8年度)の診療報酬改定は本体+3.09%(2年度平均、厚生労働省, 2026)の大型プラス改定ですが、「届出さえ出していれば自動で増収」ではありません。新加算の多くは施設基準の届出が前提で、既存届出が自動で引き継がれない加算も複数あります。

本記事は、事務長が医事スタッフを動かし、院内の点検・届出体制を回すための実務ガイドです。公開時点(6月)で5月の届出推奨期限や6月施行はすでに過ぎていますが、施設基準の届出は毎月受け付けられ、届出すれば原則として翌月分から算定を開始できます。間に合わなかった加算も、今からの届出と点検で取り戻せます。 本記事で扱うのは、次の4点です。

  • 6月施行に間に合わなかった加算を今からどう取り戻すか
  • 再届出が必要な加算をどう見分けるか
  • 算定漏れ・返戻が起きやすいポイントと点検フロー
  • 査定の回収(再審査請求)と、次回改定に向けた届出管理

本記事の点数・要件は最新の告示・地方厚生局の通知・疑義解釈でご確認ください。

「改定=自動増収」はなぜ誤認なのか?

増収分の多くが「施設基準の届出」と「正確な算定」を前提にしているからです。届出を怠れば、プラス改定の恩恵を受けられないどころか、対応漏れによる返戻でマイナスになりえます。

本体+3.09%(2年度平均。令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%、厚生労働省, 2026)の内訳は賃上げ分・物価対応分が中心で、基本方針は「人材確保・働き方改革」「医療DX推進」「アウトカム評価強化」などです。

押さえておきたいのは施行が二段階だった点です。薬価改定は2026年4月1日、本体改定は6月1日施行(厚生労働省, 2026)。「4月施行」と思い込んで本体分の届出準備が後ろ倒しになるのは改定のたびに繰り返されるパターンで、6月を迎えた今は「本体分で未対応の届出が残っていないか」を点検する段階です。

再届出が必要な加算をどう見分ける?

最も危険な思い込みは「現在算定しているから大丈夫」です。2026年改定では、既存の届出が自動で引き継がれず改めて届出が必要な加算が複数あります。代表例は次の3つ。

  • 電子的診療情報連携体制整備加算(新設):旧「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が廃止され、2026年6月から新設。旧加算の届出があっても自動移行されず、改めて届出が必要です。
  • ベースアップ評価料(大幅増点):現在算定中の医療機関も含めて改めて再届出が必要とされました。6月の再届出を失念していても、いま届出を整えれば翌月分から増点後の評価料を算定できます。賃上げ原資に直結するため、未届出なら最優先です。
  • 外来データ提出加算・充実管理加算:生活習慣病管理料の再編に伴い、旧届出済みでも再編後の加算は別届出になる場合があります。

実務としては、現在算定中の全加算を一覧化し「自動移行か/再届出が必要か」を一項目ずつ確認を医事責任者と分担します。起点は地方厚生局公表の令和8年度届出一覧と様式。最終判断は必ず一次情報(告示・通知・届出一覧)に当てる院内ルールが安全です。

マイナ保険証利用率は「いつの実績」で判定される?

判定に使うのは算定月の数か月前のレセプト実績です。6月から算定を始めるなら、その数か月前(おおむね1〜3月のいずれか)の利用率実績を事前に確認しておきます。判定対象月と基準値は告示事項のため、確定値は告示でご確認ください。

教訓は直前に気づいても間に合わない要件があるということ。次の区分判定に向け、いまから利用率を毎月記録する仕組みを作っておくのが事務長の逆算領域です。

6月施行に間に合わなかった加算は、今からでも取り戻せる?

結論、取り戻せます。施設基準の届出は毎月受け付けられ、届出すれば原則翌月分から算定を開始できるためです。

2026年改定の本体は6月1日施行で、6月算定開始の届出は5月中の受理が目安でした。公開時点(6月)でこの期限は過ぎていますが、遡及算定はできなくても今月届出を整えれば先の算定は確保できます。

事務長がいま取るべき動きは、「未届出のまま取りこぼしている加算がないか」を棚卸しし、間に合うものから今月の届出に乗せることです。参考までに、2026年改定の届出スケジュールの骨格は次の通りでした。

イベント時期(参考)
薬価改定の施行2026年4月1日
施設基準の届出開始2026年5月上旬
届出混雑の回避目安2026年5月中旬まで推奨
本体改定の施行/6月算定開始の届出必着2026年6月1日
施設基準の定例報告毎年8月(次の直近節目)

今回の期限はすでに過ぎていますが、この時系列は次回改定で同じことを繰り返さないための逆算材料になります。「施行2か月前から準備、推奨期限を院内の締切に設定」を届出管理台帳に書き込んでおけば、駆け込みも取りこぼしも防げます。

2026年1月から施設基準の電子申請の対象が大幅に拡大しています。初めて電子申請を使う場合は、本番前に一度操作確認をおすすめします。

算定漏れ・返戻はどこで起きやすい?

算定漏れと返戻の多くは「旧ルールで判断」「施設基準管理の甘さ」という人と仕組みの問題から生まれます。点数を覚えるより点検工程を設計することが本丸です。返戻(再提出で取戻可)/査定(請求減)の切り分けは前提として、ここでは「漏れが生まれる場所と止め方」に絞ります。

改定後に多発する典型パターンと、その止め方は次の通りです。

  • 旧ルールで判断する見落とし → 改定後最初の提出月を「重点チェック月」化。
  • 病名と検査・処置の不整合(査定原因) → 月次点検に「処置・検査と病名の対応チェック」を必須工程化。
  • 摘要欄の記載漏れ・テンプレ過剰 → 算定パターンごとに必要な摘要内容をマスタ化。
  • 併算定不可の見落とし(例:電子的診療情報連携体制整備加算と明細書発行体制等加算は同月算定不可、外来管理加算と処置の同日算定 等) → システムのマスタでアラート設定。
  • 施設基準管理の漏れ(受理日・算定開始日の管理不足で要件未充足時に算定) → 後述の管理台帳で月次確認。

レセプト点検は何段階で組むべき?

実務では次の3段階が基本形です。

  1. 入力時点検:受付・入力スタッフの基本チェック。高額算定・新規加算を優先。
  2. 中間点検:月途中で当月の傾向確認。改定初月は特に重要。
  3. 最終点検:提出前ダブルチェック。高額レセプトと新規算定項目を重点に。

目安は査定率0.3%以下、返戻率0.5%以下(nurses.works, 2026)。自院のベンチマークとして月次で推移を追えば、点検体制の効果が数字で見えます。

改定年に特有の「届出後」の落とし穴とは?

届出後にも事務長が見ておくべきポイントが重なります。

特に注意したいのは毎年8月の施設基準の定例報告です。届出済みの保険医療機関は、毎年所定時点の状況を地方厚生(支)局長へ報告する義務があります。スタッフの退職・産休で人員配置要件を下回ったまま報告・辞退届を出さず算定継続すると、指導対象になります。改定年はこの定例報告が施行直後と重なるため、新加算の施設基準を実態として満たせているかの再確認を8月のタイミングで併せて行うと「届出後の点検」の抜け落ちを防げます。

経過措置も誤解が多い領域です。「経過措置=届出不要」ではなく、その加算を算定する月から届出自体は必要なケースが多いとされています。例えば機能強化加算にはBCP策定が要件追加されましたが、放置すると経過措置終了後に算定できなくなります。

査定されたレセプトを、そのままにしていませんか?

見落とされがちなのが査定請求の回収です。査定されても再審査請求を「しない」医療機関が約3割、「ときどき」にとどまる医療機関が約4割という調査もあり(東京保険医協会, 2017)、査定を取り戻す動きを徹底できていない医療機関は少なくありません。月次点検に「査定項目の一覧化と回収可能性判定」を入れるだけで取りこぼし回収の余地が生まれます。再審査請求の提出先は支払基金・国保連など管轄の審査支払機関で、提出期限・様式は増減点通知に同封される再審査申出の手引きが起点になります。

請求価値の目安はシンプルです。摘要欄の補記や病名と検査・処置の整合説明で覆る見込みがあるもの、つまり記載不備・事務的な理由による査定(区分C・Dなど)は再請求の価値が高い傾向です。一方、医学的妥当性そのものを問われた査定(区分A・過剰や重複による区分Bなど)は覆りにくいため、優先度は下げます。実務では、自院でよく査定される項目から順に一覧化し、記載で説明がつくものを優先して着手するのが効率的です。

規模が大きい医療機関ほど算定漏れや査定の影響は積み上がりますが、外来中心の無床クリニックでも油断はできません。月数件の取りこぼしでも毎月積み上がれば、年間では軽視できない額になります。点検体制の整備は「コスト」ではなく「回収可能な収益への投資」だと捉えてください。

事務長が院内体制を回すために、まず何から手をつける?

ここまでを「明日から動ける順番」に整理します。

  1. 施設基準管理台帳をつくる:スプレッドシートで1行=1加算とし、列見出しに「加算名/届出日/受理日/算定開始日/次回確認日/再届出要否/担当者」を並べるだけで台帳になります。これを月次で確認し、再届出が必要なものはステータス列で追跡します。
  2. 未届出・再届出チェックを最優先で回す:電子的診療情報連携体制整備加算・ベースアップ評価料など自動移行されない加算を洗い出し、6月に間に合わなかったものは今月の届出で翌月算定を確保。
  3. 3段階のレセプト点検フローを定着:入力時・中間・最終を文書化し、改定初月を重点チェック月に。
  4. 医師との算定ルール連携を仕組み化:算定漏れの根本に職種間の連携不足が指摘されます。月1回のレセプト振り返り・新規算定項目のマニュアル化で、カルテ記載と算定根拠をそろえます。
  5. 査定の回収工程を入れる:査定項目を一覧化し、再審査請求の可否を判定。

属人的な「頑張り」でなく「仕組み」に落とし込むのがゴールです。とはいえ体制づくりまで一人で進めるのは負荷が大きいもの。番頭代行は、こうした届出管理や点検フローの設計を院長・事務長の隣で一緒に考えます。月次支援の全体像はクリニック番頭代行の月次支援タスク一覧を、改定の届出と増収機会の全体像は診療報酬改定2026 クリニック事務長が押さえる届出と増収機会を、本記事とあわせてご覧ください。

改定対応の点検体制、自院は回せていますか?

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