この広告、医療広告ガイドライン違反かも?NG事例と直し方を媒体別に自己診断

person sitting while using laptop computer and green stethoscope near
⏱ この記事は約11分で読めます

貴院のWebサイトやGoogleビジネスプロフィールの返信文を見返して、「この表現、もしかして医療広告ガイドライン違反では」と不安がよぎったことはないでしょうか。集患のために良かれと思って書いた一文が、知らないうちに規制に触れているケースは少なくありません。とはいえ身構えすぎる必要はなく、問題になる表現にははっきりしたパターンがあり、押さえれば気づいてその場で直せます。この記事は、貴院が「うちの広告、大丈夫か」と疑った瞬間に開く自己診断の入り口です。

この記事でわかること

  • 自院の発信が「広告規制の対象になるか」を見分ける2つの基準
  • よくあるNG表現と、それを残しつつOKに直す具体的な書き換え例
  • Webサイト・Googleビジネスプロフィール・SNS・チラシ・院内掲示の媒体別の勘所
  • 違反を指摘されると実際にどうなるのか(処分の流れと罰則)

なお、月1回の定期点検チェックリストや、口コミ返信・SNS・LPに絞った落とし穴の解説は、それぞれ別記事にまとめてあります。本記事は「疑った瞬間の最初の照合」に絞り、深掘りは記事末尾の関連リンクへ誘導します。

そもそも、その発信は「広告」に当たるのか?

ある発信が医療広告規制の対象になるかは「誘引性」と「特定性」の2つを同時に満たすかで決まります。言葉は難しそうですが中身は単純です。

  • 誘引性=「来院してほしい」という意図があること
  • 特定性=どの医療機関のことか分かること(医療機関名や所在地などで特定できる)

この2つが揃えば広告です。医療機関名を出した公式アカウントは特定性を常に満たすため、受診を促す内容なら基本的に規制対象です。以前は「認知性」という3つ目の基準もありましたが、2018年の医療法改正で撤廃され、現在は2要件です(厚生労働省 医療広告ガイドライン, 令和6年改正)。

迷いやすい媒体を2要件で整理すると次のとおりです。

媒体規制対象かひとことメモ
Webサイト(公式)対象ただし後述の「限定解除」で書ける範囲が広がる
公式SNSアカウント対象投稿・返信・プロフィールすべて
スタッフ個人SNS(院名明記+集患目的)対象2025年の事例解説書第5版で明確化
Googleビジネスプロフィールのオーナー返信対象返信文はクリニックの「広告」として扱われる
配布チラシ・院外看板対象書ける事項がWebより狭い(後述)
院内掲示・待合室のパンフレット原則対象外来院済みの患者向けで誘引性を欠くため

院内掲示が原則対象外なのは、待合室の掲示が「すでに来院した人」向けで、新たな受診を誘う性質が薄いためです。ただし窓ガラスや入口など院外から見える掲示は、通りすがりの人を誘う広告になりうる点に注意してください。

「2026年3月の改正」で何が変わったのか?

「2026年3月30日に医療広告ガイドラインが改正された」という話は、正確に区別すると安心です。この日に更新されたのはガイドライン本体ではなく、運用を具体例で示す「ウェブサイト等の事例解説書(第6版)」です。ガイドライン本体の最終改正は令和6年(2024年)3月22日で、その後に解説事例が積み重ねられてきた、という関係です(厚生労働省, 2026)。

つまり「ルールが一新された」のではなく「NG表現の具体例が増えた」と捉えるのが正確です。第6版や前年の第5版で明確化された主な点は次のとおりです。

  • 再生医療・エクソソーム関連の「革新的」「画期的」といった表現が明示的にNG
  • SNS(Instagram・TikTok・YouTube等)のNG事例が大幅に拡充
  • 自由診療で医薬品処方が中心となる場合、服用期間・回数に加えて「用法・用量」の記載も必要

「最近の発信がこのあたりに触れていないか」で見直すと優先順位をつけやすくなります。

よくあるNG表現は? そのままOKに直すには?

ここからが自己診断の本体です。「これ、うちのサイトに書いてあるかも」と思った表現を直し方とセットで見ていきます。網羅ではなく、貴院でも起こりやすいものに絞りました。

「最高」「No.1」と書いていませんか?(比較優良・誇大)

他院より優れていることを示す表現や根拠のない最上級表現は、たとえ事実でもNGです。医療広告でつまずく定番です。

NG表現なぜNGかOKへの直し方
「地域No.1の症例数」「日本一の技術」他院との比較・最上級表現「年間手術件数〇〇件(2025年度実績)」と具体的な数値で語る
「最先端医療」「革新的な治療法」根拠なき優越性の示唆「〇〇療法を導入しています」と治療内容を具体的に書く
「絶対安全」「100%安全」「必ず治ります」医学的根拠のない断定・保証「安全管理の指針を整備しています」「詳細やリスクはご相談ください」

「すごさ」を主観的な形容詞でなく客観的な数値や事実で語るのがポイントです。数値は調査時期・対象・出典を添えると安全です。

患者さんの「声」を載せていませんか?(体験談)

治療の内容や効果に関する患者の体験談は、Webサイトへの掲載が全面的に禁止されています。ご本人の同意があっても掲載できません。

具体的には、感謝の手紙の掲載、「患者さんの声」コーナーでの効果への言及、自院サイトへのGoogleクチコミの転載などが該当します。スタッフが「私も使ってみました」と書く形も第三者の体験談として同じ扱いで、いずれも直し方は原則削除です。

なお「駅から近くて通いやすかった」のような治療効果に関わらない感想はQ&Aで許容されますが、効果への言及との線引きが難しく、実務上は載せないのが無難です。

ビフォーアフター写真はどう直せばいい?

ビフォーアフター写真は、4つの項目を「写真の付近」にすべて記載すれば掲載できます(Webサイトの場合)。逆に1つでも欠けると違反です。

写真の近くに必須の4項目よくある不備
治療内容・方法の具体的な説明別ページ・別タブに分けている(第6版で不可と明確化)
費用(税込の総額の目安)「〇〇円〜」だけで総額が分からない
治療期間・回数記載漏れ
主なリスク・副作用軽微なものを省略している

多い不備は、「4項目を書いたつもりで1つ欠けている」「写真だけ別ページにまとめ説明を別タブに置く」の2パターンです。第6版では、説明は写真の付近に置く必要があり、別ページのリンクでは足りないと明確にされました。写真の真下に4項目を並べると覚えるのが確実です。

未承認薬を扱う場合に抜けやすい項目は?

AGAや美容皮膚科、点滴療法などで国内未承認の医薬品・医療機器を扱う場合、5つの項目をすべて明記する必要があります。とくに後半が抜けやすいので注意してください。

  1. 未承認の医薬品・医療機器である旨(個人輸入の場合はその旨も)
  2. その入手経路
  3. 国内に同一成分・性能の承認薬・医療機器があるか
  4. 諸外国における安全性等の情報
  5. 公的医療保険の適用外であり、かつ医薬品副作用被害救済制度の対象外である旨

「未承認である旨」は書けていても、5番目の「救済制度の対象外」が抜けるケースが、指導対象として事例解説書に挙げられています。未承認薬のページがある貴院は、まずここを確認してください。

媒体ごとに気をつけたい勘所は?

NG表現の多くは媒体共通ですが、規制の「広さ」は媒体で違います。とくに見落とされやすいのがWebとチラシでOKの範囲が異なる点です。

WebサイトとGoogleビジネスプロフィール

Webサイトには「限定解除」という仕組みがあります。問い合わせ先・自由診療の内容と費用・リスクや副作用などを記載する要件を満たせば、本来は広告できない詳しい情報(体験談を除く)まで掲載できます。逆に、自由診療ページに費用やリスクの記載がないと前提が崩れます。

Googleビジネスプロフィールでは、オーナー返信が広告として扱われる点に注意が必要です。返信文で患者の治療効果に触れたり、「他院では難しかった症状も当院で」といった比較表現を使うと違反になりえます。さらに、口コミ投稿を条件に割引や特典を出す行為は、医療広告規制だけでなく景品表示法のステルスマーケティング規制にも触れます。実際に2024年6月、口コミ投稿を条件に費用を割り引いた医療法人へ消費者庁が初の措置命令を出しました(消費者庁, 2024)。

チラシ・院外看板(Webと同じ感覚はNG)

ここが最大の盲点です。配布チラシや院外看板には、Webサイトの限定解除制度が適用されません。書けるのは厚生労働省が定める広告可能事項(診療科名・医師名・診療時間・所在地・連絡先など)だけです。

つまり、Webサイトで適法に載せているビフォーアフター写真や自由診療の料金説明を、そのままチラシに転用すると違反です。「Webで載せられたからチラシでも大丈夫」という感覚が違反を生みます。媒体が変われば規制も変わると切り分けてください。

違反を指摘されると、実際どうなる?

いきなり罰則ではありません。厚生労働省の標準的な対応は、まず任意の改善指導から始まり、応じなければ法的強制力のある是正命令、さらに悪質・継続的な場合は許可取消や刑事告発へと段階的に進みます(GemMed, 2024)。覚知から数か月かけて進むのが通常で、通知後の一定期間内に多くが改善に至ります(厚生労働省 ネットパトロール事業)。

罰則は、虚偽広告や是正命令違反について医療法第87条第1号で「6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」と定められています(医療法)。なお二次情報に「50万円以下の罰金」とする記載が見られますが、これは他法令との混同で、正しくは30万円以下です。

見つかる経路として大きいのが、厚生労働省のネットパトロール事業です。違反が確認されたサイト数は令和5年度(2023年度)で1,098サイト・6,328か所でした(厚生労働省, 2024)。令和7年度は2026年2月末時点で1,842サイト・5,225件ですが(厚生労働省 ネットパトロール事業, 令和7年度)、これは年度途中の部分的な数字のため、前年の通年実績とそのまま比べられません。令和5年度の実績では1サイトあたり平均約5.8か所の指摘があり、「1か所直せば終わり」とはなりにくいのが実情です。罰則の重さよりも、是正命令の段階で院名が公表されうることのほうが実務上は重い負担です。

次の一歩:気づけたなら、もう半分は直せています

ここまで読んで「あの表現、見直そう」と思えたなら、それが一番大事な一歩です。広告規制は知ってさえいれば防げるものがほとんど。具体的に手を動かすなら次の記事が役立ちます。

一方で、「自己診断してもまだ不安が残る」「集患も財務も人事も自分一人では手が回らない」と感じる院長も多いはずです。私たちは社外のCFO・COO・CHRO・CMOであり事務長でもある「番頭」として、財務・労務・人事・集患・バックオフィス全般を院長の隣で引き受けます。医療広告のチェックもその一部です。気になることがあれば無料相談から気軽にお声がけください。判断を迫るものではないので、現状を整理する壁打ち相手としてお使いいただくだけでも構いません。

なお本記事は2026年6月時点の情報を整理したものです。個別の表現が規制に該当するかの最終判断は、必ず厚生労働省の一次情報(ガイドライン本体・Q&A・事例解説書)や専門家にご確認ください。

参考資料