医療広告ガイドライン チェックリスト|HP・SNS・LP別に院長が押さえる7領域

クリニック院長が患者のカルテにチェックを入れている様子
⏱ この記事は約9分で読めます

「ガイドラインは読まなければと思いつつ、手がつかない」。院長とお話ししていると、ほぼ必ずこのお声を聞きます。HPは制作会社、SNSはスタッフ、LPは代理店任せで、誰も最新版を通読していない状態になりがちです。

本記事は、通読の代わりにそのまま書き写して・スクリーンショットして手元に残せる自己点検テンプレートとしてお使いください。代表項目に絞り、月1回・15分の棚卸しで回る形に整理しました。

医療広告ガイドライン違反は今どれくらい起きているのか?

2023年度の厚生労働省ネットパトロールでは、1,098サイトにわたり合計6,328カ所の違反が確認されています(厚生労働省 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会資料, 2024年8月)。

1サイト平均で約6カ所、指摘は1カ所では終わりません。違反の筆頭は「広告可能とされていない事項の広告」で、誇大広告・ビフォーアフター写真がこれに続きます。自費・美容医療ほど引っかかりやすい領域です。具体例は医療広告ガイドラインで院長がハマりやすい違反の落とし穴に整理しています。

A. HP・SNS・LP共通で最初に確認すべき項目は?

まず確認したいのは、全媒体に共通する4パターン——虚偽・誇大・体験談・比較優良広告です。この4つが揃っていれば、残り7割の違反リスクはぐっと下がります。

  • ☐ 「絶対安全」「完全治癒」「必ず効く」等の断定表現が残っていないか
  • ☐ 「日本一」「地域No.1」「満足度99%」など根拠不明の最上級表現がないか
  • ☐ 患者の体験談・口コミを院内サイトに掲載していないか(Googleクチコミを自院HPに転載することも対象)
  • ☐ 「他院より安全」「他院より効果的」といった比較優良表現がないか
  • ☐ 自由診療の治療紹介に治療名・説明・費用・期間・主なリスクと副作用の5要素が揃っているか

体験談は患者さんの同意があっても違反対象です。「選んで載せる」時点で情報が偏る、という前提のためです。

B. ビフォーアフター写真は何を書けば掲載できるのか?

写真掲載そのものは禁止ではなく、「限定解除4要件」を満たせば掲載できます。

違反件数が多い領域の一つで、院長が一番見落としやすいポイントです。以下4項目を写真と同じページ内に併記してください。

  • ☐ 治療内容・方法の具体的説明
  • ☐ 費用(税込の目安、複数回の場合は総額)
  • ☐ 治療期間・回数
  • ☐ 主なリスク・副作用・合併症

4項目は「1つでも欠ければ違反」です。支援先クリニックでも、症例ページ下部にまとめて併記したのにネットパトロールで指摘を受けた、というご相談をいただきました。写真直後に太字で出すほうが無難です。過度なレタッチや照明補正は、限定解除を満たしていても別途「虚偽広告」に該当します。

C. 未承認薬・未承認医療機器を使う場合に必須の5項目とは?

AGA・美容皮膚科・点滴療法など、未承認薬・未承認医療機器を用いた自由診療の広告は、以下5項目の併記が必須です(厚労省 医療広告ガイドラインQ&A)。

  • ☐ 未承認医薬品・未承認医療機器である旨
  • ☐ 入手経路(個人輸入等)
  • ☐ 国内で同一成分・性能を有する承認薬・医療機器の有無
  • ☐ 諸外国における安全性等に係る情報
  • ☐ 公的医療保険適用外かつ医薬品副作用被害救済制度の対象外である旨

漏れが多いのは4・5番目です。「未承認薬である旨」は書けていても「救済制度の対象外」が抜けているケースが目立ちます。1項目でも欠ければ違反なので該当ページは一度洗い直してください。

D. SNS運用でスタッフと共有しておきたいこと

「クリニック名+受診を促す意図」がある投稿は、個人アカウントであっても医療広告規制の対象になり得ます2026年3月30日改正で事例解説書第6版に明記)。

  • ☐ スタッフの個人アカウントから集患目的でクリニック名を出した投稿をしていないか
  • ☐ インフルエンサー起用時に「#PR」「提供」等の報酬を受けた旨の明示があるか
  • ☐ 患者さんの声を動画で紹介する投稿を行っていないか(体験談扱いで違反)
  • ☐ ハッシュタグに「#絶対治る」「#No1クリニック」等の誇大表現がないか

インフルエンサー投稿はステマ規制(2023年10月施行)と医療広告規制の両方がかかります。院内SNSルールを文書化しておくだけでも指摘リスクはぐっと下がります。

E. LPで特に気をつけるポイント

LPは集患効率が高い反面、費用表示と薬機法の落とし穴に一番ハマりやすい媒体です。

  • ☐ 「○○円〜」ではなく、税込の実質総額が分かるよう記載されているか
  • ☐ キャンペーン価格に「通常価格」「今だけ」等の煽り表現が過剰になっていないか
  • ☐ 未承認薬を扱うLPで、5項目必須記載がファーストビュー以外にも掲載されているか
  • ☐ 効果効能を謳う表現が薬機法上の承認範囲内に収まっているか
  • ☐ フォーム送信直前のCTA付近に「治療にはリスクがある旨」の記載があるか

離脱率を下げたくて必須記載を削りたくなりますが、後から指摘を受けて直す手間を考えると、最初から入れておく方が結果的にラクです。

F. 専門医資格の正しい書き方

専門医資格の書き方は、確認が必要な落とし穴の一つです。広告できるのは、厚生労働大臣が認めた団体の認定資格に限られます。

  • ☐ 「○○学会認定専門医」と書く際、その学会が広告可能な専門医団体として認可済みか
  • ☐ 認可されていない民間団体の認定資格を、あたかも公的資格のように記載していないか
  • ☐ 「名医」「ゴッドハンド」等の人物評価表現を使っていないか(比較優良広告に該当)

自費診療系は民間団体の認定資格が多く、リスト外の資格掲載は「広告可能外事項」違反(指摘第1位)です。厚労省の最新リストと一度つき合わせておいてください。

G. 再生医療クリニックで見直しておきたいNGワード

2026年3月30日改正で、再生医療領域の誇大広告NG表現が事例解説書第6版に追加されました(厚生労働省, 2026年3月30日改正)。再生医療を提供していないクリニックはスキップして構いません。

  • ☐ 「革新的」「画期的」「奇跡の治療」 — 第6版で明示的にNGに追加された誇大表現
  • ☐ 「患者満足度99%」(根拠・調査方法の記載がない場合) — 母数・調査時期不明の数値は虚偽広告に該当しうる
  • ☐ 「最新鋭の機器」「唯一無二の施術」 — 比較優良広告(他院との優劣を暗示)に抵触
  • ☐ 「幹細胞で若返る」「アンチエイジングの決定版」 — 未承認効能を断定する表現で、医療広告ガイドラインの誇大広告規定(およびQ&A)に抵触する

数年前のブログやLPに褒め言葉のつもりで書いた表現が残っているケースが多く、開設3年以上のクリニックほど見直しが必要です。

違反が発覚した場合、何が起こるのか?

行政指導→改善命令→公表→罰則と段階的にリスクが高まります。悪質事例では6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(医療法第87条)、さらに診療所の開設許可取り消しまで可能性があります。

景表法との二重リスクも始まっています。2024年6月、消費者庁はGoogleマップの口コミ投稿を条件にインフルエンザワクチン接種費用(1,650円)から550円を割り引いた医療法人に、ステマ告示違反として初の措置命令を出しました(消費者庁, 2024年6月6日)。

このチェックリストをどう運用に組み込むか?

月1回、院長が15分確保し、HP・SNS・LPを回覧する形が最も続きます。

  • ☐ 月初に、本チェックリストをスクリーンショットまたはメモに書き写してデスクに置く
  • ☐ HP・SNS・LPの代表ページをスクロールしながらチェックを入れる
  • ☐ NG項目はその場で担当者にチャットで指示(後回しにしない)
  • ☐ 年1回、広告可能専門医団体リストと事例解説書の最新版を確認する

最終責任は院長にありますが、毎回全文を院長が見る必要はありません。制作会社・代理店・スタッフが担当範囲ごとに自己点検し、院長は最終確認に回る役割分担で継続できます。

よくある質問

Q1. ガイドライン違反は罰金だけで済みますか?
「どうせ罰金30万円でしょう?」とおっしゃる院長がいますが、罰金よりクリニック名の公表のほうが打撃です。新患が検索で情報にたどり着き、地域の評判に長く影を落とします。

Q2. 制作会社や代理店に任せていれば、院長の責任は問われませんか?
「制作会社が作ったものだから」とお話しされる院長は多いのですが、最終責任は開設者である院長が負います。発注時の要件書・納品時チェック・定期点検の3点を仕組みにしておけば、院長は最終確認のみで済みます。

Q3. 過去のブログ記事も見直す必要がありますか?
「昔の記事はもう放置でいいですよね?」とよく聞かれますが、公開中のページは投稿年にかかわらず現行ガイドラインの対象です。まずは自費診療記事・キャンペーン告知・症例紹介ブログから。この3カテゴリで指摘リスクの大半は潰せます。

私たちクリニック番頭代行は、HP・LP・SNSの広告棚卸しから月次チェック体制の設計まで、院長の隣で手を動かしてきました。どこから作るか迷う院長は無料相談をご活用ください(オンライン30分・資料不要)。

参考資料