この記事でわかること
- 中小企業のバックオフィス人材不足がどれほど深刻か(最新データ)
- 正社員・派遣・外部委託それぞれのメリット・デメリットとコスト比較
- 自社に合った選択肢の見極め方と「組み合わせ」の考え方
- 「1人経理」のリスクを放置しないための具体的な一歩
「経理を採りたいのに、応募が来ない」は今や中小企業の共通課題です
求人を出しても応募が集まらない。ようやく面接にこぎつけても、大手に流れてしまう。
中小企業の経営者から、こうした相談を受ける機会が増えました。人手不足は製造や営業の現場だけの問題ではありません。経理・総務・人事といったバックオフィスにも、確実に波及しています。
東京商工会議所が実施した調査によると、中小企業の68.0%が人手不足を感じており、これは2015年の調査開始以来、過去最大の水準です。さらにそのうち57.2%が「事業運営に支障が出ている」と回答しています。
バックオフィスに目を向けると、状況はさらに深刻です。Sansan株式会社が経理担当者1,000名を対象に行った調査では、50.1%が人手不足を実感し、そのうち85.2%が「深刻」と答えています。
背景には、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応による業務量の増加があります。制度が変わるたびに仕事は増える一方で、それを担う人材は増えていない。多くの中小企業が、この構造的なギャップに苦しんでいるのが現状です。
バックオフィス人手不足を放置すると経営にどう影響するか
「とりあえず今いるメンバーで回せているから」と、課題を先送りにしている企業は少なくありません。しかし、人手不足を放置した場合に生じるリスクは、想像以上に大きなものです。
経理処理のミス・漏れが増える
同調査では、人手不足の影響として48.5%が「経理処理のミス・漏れ」を挙げています。請求書の処理遅れや仕訳ミスは、取引先との信頼関係に直結します。
残業が常態化する
47.7%が「時間外労働の増加」を報告しています。特に決算期や年末調整の時期に、特定の担当者に負荷が集中しやすくなります。
月次決算が遅れる
32.9%が「月次決算の遅れ」を挙げています。経営数字の把握が遅れれば、タイムリーな意思決定ができなくなります。
属人化リスクが高まる
中小企業では、経理を1人で担当しているケースが珍しくありません。その担当者が退職・休職した場合、業務がストップするリスクがあります。引き継ぎ先がいなければ、経営者自身が対応せざるを得ない状況に追い込まれます。
ここで注目すべきデータがあります。従業員100名以下の企業で、人手不足に対して何らかの対策をしている企業は、わずか22.0%にとどまっています。つまり、約8割の企業が課題を認識しつつも、具体的な手を打てていないのです。
正社員・派遣・外部委託 バックオフィス確保の3選択肢を整理する
バックオフィス人材を確保する方法は、「正社員を雇う」だけではありません。大きく分けて、正社員雇用・人材派遣・外部委託(BPO)の3つの選択肢があります。
それぞれに強みと弱みがありますので、自社の状況に合った選択が重要です。
正社員雇用 — 長期的な組織力を築きたいとき
正社員を雇うことの最大のメリットは、社内にノウハウが蓄積されることです。長期的に組織の一員として成長してもらえるため、他部門との連携や社内文化の形成にも貢献します。
一方で、採用には数か月単位の時間がかかることが一般的です。給与に加え、社会保険料・福利厚生費・教育研修費などを含めた総コストは、年間415万~537万円程度になります(月収30万円の場合の試算)。さらに、エージェントを利用した場合の採用コストが50万~100万円上乗せされるケースも珍しくありません。
中小企業にとっては、これだけの投資をしても「大手に人材を取られてしまう」「採用しても定着しない」というリスクが常につきまといます。
人材派遣 — 短期間で即戦力が必要なとき
派遣のメリットは、比較的短期間で経験のある人材を確保できる点です。決算期や年末調整といった繁忙期だけの増員、産休・育休の代替など、スポット的な活用に向いています。自社で直接業務指示ができる点も、社内の運用に馴染みやすい理由のひとつです。
年間コストは約350万~430万円で、短期であれば正社員よりも割安になります。ただし、長期間にわたって継続する場合は、正社員より割高になることもあります。また、派遣スタッフ個人のスキルに依存しやすく、契約期間の制約(いわゆる3年ルール)もあるため、長期的な体制構築には向きにくい面があります。
外部委託(BPO・バックオフィスアウトソーシング) — 業務の仕組みごと任せたいとき
外部委託は、記帳代行、給与計算、請求書処理といった定型業務を、専門業者にまとめて依頼する方法です。
採用や教育のコストが不要で、法改正への対応も委託先が行ってくれるため、経営者の管理負荷を大幅に軽減できます。月額費用は業務範囲によって月10万~50万円程度と幅がありますが、正社員と比較して年間35~39%のコスト削減が可能という試算もあります。
一方で、社内にノウハウが残りにくいという課題があります。また、業者選定や品質管理の「目利き力」が求められる点は、事前に理解しておく必要があるでしょう。
コストと隠れリスクを含めた3択の比較表
人材確保の意思決定は、表面的な人件費だけでは判断できません。以下のような「隠れコスト」も含めて総合的に比較することが大切です。
| 比較項目 | 正社員 | 派遣 | 外部委託(BPO) |
|---|---|---|---|
| 年間基本コスト | 約415万~537万円 | 約350万~430万円 | 約120万~600万円 |
| 採用コスト | 50万~100万円 | 0円 | 0円 |
| 教育・研修費 | 年10万~30万円 | 基本不要 | 0円 |
| 退職時のリスク | 高い | 中程度(派遣会社が代替手配) | 低い(組織的に対応) |
| 法改正対応 | 自社負担 | 一部自社負担 | 委託先が対応 |
| 属人化リスク | 高い(特に1人体制) | 中程度 | 低い |
| 管理工数 | 中(評価・労務管理) | 中(業務指示・勤怠管理) | 低(成果物ベース) |
このように並べてみると、それぞれの選択肢が「向いている場面」と「向いていない場面」があることがわかります。重要なのは、どれかひとつを正解とするのではなく、自社の状況に合った組み合わせを見つけることです。
「どの選択肢が自社に合うか判断できない」というご相談が、最もよくある入り口です。
番頭代行では、バックオフィス体制についての無料相談(30分・完全無料)を承っています。
- 正社員・派遣・外部委託のどれが合うか、一緒に整理します
- まだ何も決まっていなくて構いません
- 相談したからといって、契約を求めることはありません
「どれを選ぶか」ではなく「どう組み合わせるか」が現実的な答えです
多くの中小企業にとって、現実的な最適解は「ひとつに絞る」ことではなく、「組み合わせて使い分ける」ことです。
たとえば、以下のような役割分担が考えられます。
| 業務の階層 | 担い手の例 | 業務の具体例 |
|---|---|---|
| 経営判断に関わる業務 | 正社員 または 外部顧問 | 資金繰り判断、予算策定、金融機関との交渉 |
| 業務の統括・設計 | 正社員(兼任可) | 業務フローの設計、外部パートナーとの連携管理 |
| 日常の実務オペレーション | 外部委託(BPO) | 記帳、給与計算、社会保険手続き、請求書処理 |
| 繁忙期の一時的な増員 | 派遣 | 決算期の対応、年末調整のサポート |
このように、経営判断に近い部分は社内で押さえつつ、定型的な実務は外部に任せる。そして必要に応じてスポットで派遣を活用する。こうした「ハイブリッド型」の体制は、コストの最適化と業務の安定性を両立しやすい方法です。
「正社員が採れないから回らない」と感じているなら、それはもしかすると「正社員だけで回そうとしている」ことが原因かもしれません。
自社のバックオフィス体制を見直す前に確認したいこと
最後に、自社のバックオフィス体制を見直すにあたって、まず確認していただきたいポイントをまとめます。
現状の棚卸し
- バックオフィス業務を誰が、どのくらいの時間をかけて担当しているか
- 特定の担当者に業務が集中していないか
- その担当者が不在になった場合、業務を引き継げる人はいるか
優先順位の整理
- 社内に残すべき業務(経営判断に直結するもの)はどれか
- 外部に任せられる業務(定型化できるもの)はどれか
- まず手をつけるべき「最も負荷が高い業務」はどれか
こうした整理をしたうえで、正社員・派遣・外部委託の選択肢を検討すると、より的確な判断ができるようになります。
とはいえ、「自社だけで最適な体制を設計するのは難しい」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。バックオフィスの体制構築は、経営全体の仕組みに関わるテーマだからです。
外部パートナーの活用について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
よくある質問
Q. 経理採用がうまくいかない場合、まず何から手をつけるべきですか?
まず「現状の業務を誰が、何時間担当しているか」を棚卸しすることをおすすめします。正社員・派遣・外部委託のどの選択肢が合うかは、業務量と業務の性質によって変わります。採用活動と並行して、外部委託や派遣の活用を検討することで、即効性のある体制改善につながることも少なくありません。
Q. 外部委託(BPO・バックオフィスアウトソーシング)は、中小製造業でも使えますか?
はい、活用できます。記帳代行や給与計算・社会保険手続きなどの定型業務は、業種を問わず外部委託の対象になります。製造業特有の原価計算や在庫管理は社内で行い、それ以外の管理業務を外部に委ねるという役割分担も現実的です。まずは「どの業務を切り出せるか」の整理から始めると判断しやすくなります。
Q. 正社員採用と外部委託を比べると、コストはどちらが低いですか?
一概にはいえませんが、月収30万円の正社員を雇用した場合、社会保険料・採用費・教育費を含めると年間500万円以上かかるケースがあります。外部委託は業務範囲により月10万~50万円程度(年間120万~600万円)と幅がありますが、採用・教育コストがゼロで属人化リスクも低い点を考慮すると、特に「繁忙期が限られている」「1人経理体制」の企業では外部委託のほうがトータルコストを抑えやすいことが多いです。
Q. 相談したら、外部委託を契約しなければいけませんか?
いいえ、相談したからといって契約を求めることはありません。番頭代行の無料相談は、「自社にとって何が最適か」を一緒に整理する場として設けています。相談の結果、「まだ正社員採用のほうが合っている」という結論になることもあります。現状の整理や選択肢の確認だけでもお気軽にご利用ください。
まとめ
バックオフィスの人手不足は、中小企業にとって「いつか解決する一時的な問題」ではなく、構造的な経営課題です。
正社員を雇うことだけが解決策ではありません。派遣や外部委託を含めた3つの選択肢を理解し、自社の規模・業務内容・成長フェーズに合わせて組み合わせることで、コストを抑えながら安定した管理体制を構築できます。
「何から手をつければいいかわからない」という方は、まず自社のバックオフィス業務の棚卸しから始めてみてください。そのうえで、外部の専門家に相談するのもひとつの方法です。
「今の体制で本当に大丈夫か、一度確認したい」という方へ
番頭代行では、中小企業のバックオフィス体制について、30分の無料相談を承っています。
- 正社員・派遣・外部委託のうち、自社に合う組み合わせを一緒に整理します
- 「まだ何も決まっていない」「検討を始めたばかり」という段階でも歓迎です
- 費用は完全無料。相談後に契約を求めることはありません
参考資料
- 東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」
- 東京商工リサーチ「人手不足企業、69.3%で前年よりも悪化」
- Sansan「経理の人手不足に関する実態調査」
- マネーフォワード「調査結果から見るバックオフィス業務の課題とは?」
- 帝国データバンク「人手不足倒産」動向調査


